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[レビュー]Slavogorje – Pjesni (クロアチア/フォーク・ペイガン・ブラックメタル)

[レビュー]Slavogorje – Pjesni (クロアチア/フォーク・ペイガン・ブラックメタル)

クロアチアの首都ザグレブ(Zagreb)出身のフォーク/ペイガンブラックメタル、Slavogorjeの3rdフルアルバム。2014年作品。ブックレットの中に、ジャケ絵のステッカーが挟まれてて、ちょっと得した気分です。

関連情報的なもの

バンド名のSlavogorjeは、Hill Of The Slavsという意味になるそうです。2005年に、ヴォーカル(とその他楽器いろいろ)のRugiewit氏と、ギター(加えて後にプログラミング)担当のIsar氏が中心となり結成。

Metal Archivesによると、本作Pjesniアルバムのリリースまでに、デモ2作、スプリット2作、フルアルバム2作、EP1作がリリースされていて、そこそこにキャリアのあるバンドと言えるかもしれません。

そして、本作Pjesniアルバムは彼らの3rdアルバムで、前作から5年後の2014年作品という事になります。

どうやらその間に、Isar氏が脱退し、ギタリストにJuraj氏、ドラマー・プログラマーにポーランドからRadbor Władysławowic氏を迎えていますね。

現在彼らはこのラインナップ変更によって、彼らはクロアチア-ポーランドのインターナショナルバンドとして活動を再開しているという事のようです。

彼らのBandcampページによると、彼ら自身はSlavogorjeの音楽を、

croatian-polish band which combines raw black metal with neofolk and ambient music, strongly bound to nature and seasons, inspired by Slavonic history, tradition and beliefs.

と表現しています。

スラヴの歴史や伝統などから影響を受けた、自然派Rawブラックメタル+ネオフォーク+アンビエント、という感じでしょうか。

スラヴの魔の森

音楽的には、ブラックメタルの上にフォーク楽器のメロディを乗せるという、いわゆるフォーク・ペイガンブラックというのではなく、どちらかというとブラックメタルパートとフォーク・アンビエントパートがはっきり切り分けられているタイプ。

個人的にはなんとなくノルウェーのUlverの初期3部作のイメージに近い気がします。アルバム全体の構成を1st、アコースティックぽさを2nd、ブラックメタルの凶暴性はを3rdからそれぞれ採って混ぜた様な。

 

クリーントーンのトレモロリフがメロウに幕開けを告げる1曲目。一瞬ゴッドファーザーのテーマかと思ったりしましたが、直後にはジリジリとノイジーなギターが炸裂し、ドラムスはバタバタと疾走。ヴォーカルはほとんどグロウルに近い感じなので、ギターとヴォーカルの組み合わせはちょっとウクライナのHate Forestを思い起こさせるかも知れません。

2曲目は全編アコースティック+クリーンヴォイスのフォークソング。中盤からは女性ヴォーカル、ピアノ、ヴァイオリンも入り、ほっとした温かみを感じます。

3曲目はアトモスフェリックブラック系の雰囲気の曲で、メタリックなパートと、フォーク風なパートを切り替えながら進みます。なんというか、ほわんと幽玄なタッチの曲ですね。

4曲目は本アルバムの、フォーク・アンビエント要素のピークといえるでしょう。淡い感じでライライ歌唱が聴こえ、そのあとおよそ6分に渡って、霧のようなヴェールのようなアンビエントサウンドが鳴り続けます。

アンビエントサウンドから一転、ノイジーなギターとヴァイオリンの悲しげなメロディーがブラストビートに乗せて炸裂する5曲目は、本アルバムのもうひとつの、そうブラックメタルとしてのハイライト。ここではわめき系のヴォーカルも登場して、森の奥から悲鳴と怨念が聴こえる様な趣です。

7曲目はフォークというか、アンビエントというか、インストというか・・・なのですが、これは非常に想像力に訴えそうな音。チェロがリズムを刻み、笛や鈴の音色が舞う中、ずっと波のような水音と、泡のはじけるポワンという音が鳴っているという・・・これはミステリアスで凄い。

そして8曲目はなんだかどこかで聴いたメロディーだと思ったら、Bathoryのカバーでした。Nordland Iアルバムから、”Broken Sword”です。それほど違和感なく本編に溶け込んでるというか、この音質だと何入れてもそんな雰囲気になってしまいそうでもありますが。・・・いやでもこのヴァイキング調のこの曲のテイストは良く言えばスパイスになってて、悪く言えばちょっと浮いてるかも。

 

難解なようでいて・・

あぁこれは難解系の手ごわいやつかも・・・というのが初めてこのPjesniアルバムを聴いた時の印象でした。

薄っぺらな音質でジリジリ鳴ってるギターは不鮮明すぎてほぼ何やってるか聴き取れず、そのせいかドラムスのリズムも捉えにくいので曲構成もなかなか入ってこず。。

そんな結構凶悪なブラックメタルパートに加え、さらにアコースティック・フォーク楽器で一気に雰囲気が変わったり、果てはミステリアスなアンビエントパートが挟まれていたり・・・こういう自由自在、行ったり来たり感はなんというか、ポストブラック系にも通じるものがあるでしょうか。

個人的にはポストブラックというか、ちょっと考えさせられる系というか意識高い系方面のブラックはそれほど得意でないのもあり、本作の内容を把握するのはなかなか大変でした。いやはや深遠のフォーク・ペイガンブラックです。

とはいえ、本作のブラックメタル要素とフォーク要素のバランスはおそらく半々くらいだと思うのですが、そのあたりを掴めれば、同時に聴き所も分かってくるので、そうなれば本作が第1印象ほど難解ではないことも把握できてくるんではないかと思います。

 

バンドサウンドの不鮮明さが、彼ら確信犯なのか単に出来がよくないだけなのかは不明ですが、そのへんも含めて、独特の世界観を持った作品になると思います。

解りやすいメロディー満載のフォークブラック、というわけにはいきませんが、独特の狂気とひねくれた異形のフォーキッシュ感が漂う、バルカンの暗い森ブラックメタルと呼んで良いでしょう。

 

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