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[レビュー]Tryglav – Night of Whispering Souls (クロアチア/ブラックメタル)

[レビュー]Tryglav – Night of Whispering Souls (クロアチア/ブラックメタル)

クロアチアのスプリット出身、Boris Beharaなる人物による一人ブラックメタルの1stフルアルバム。2019年作品。イタリアのExtreme Metal Music(まんまですね)からのリリース。

上の写真左のジャケ裏は後ろに覆面の4人がいて、てっきりメンバーの皆様かと思ってましたが、蓋を開けてみれば実際は一人ブラックだったという。。。そして聴いてみると、とても一人ブラックとは信じがたい恐るべきメロブラ体験が待ち受けているのでした。

関連情報

幸運なことに、2つ程インタビュー記事を発見できたので、ここではそれらを元に、バンド関連情報をまとめてみましょう。

Tryglavのスタートは2018年。なんでも、同じ情熱を持たない人たちと組んで活動するのに辟易した、ブレインであるBoris Behara氏が、最終的に「なら一人でやるわ」ってな具合に始めたのが始まりだそう。そしてBoris氏自身、何がどうあるべきかというビジョンを持っているから、Tryglavは最期まで一人ブラックだろうとも語っています。

そのバンド名であるTryglavは、スラブの神話の神であるTriglavから。空と大地と、地下世界を表す神とされてるとのことです。

アルバムのブックレットと、Metal Archivesの情報によると、アルバムのレコーディングはBoris氏自身のスタジオで行われたそうです。一人ブラックということで、すべての楽器はBoris氏が担当。ただし、ヴォーカルについては、レコーディング機材の都合(機材が”Poor”だったらしい)により、オーストラリアのMorbidなる人物にBoris氏の手による歌詞とパターンを指示する形で準備されたようです。

このMorbid氏はThe Amentaというインダストリアル・デスメタルのヴォーカルをやっているそうですが・・・全く未聴。本作では噛みつかんばかりの壮絶な絶叫を披露しています。

また、ゲストミュージシャンとして、イタリアのメタルHideweaver(こちらも未聴><)のFabio “LaNYuX” Rossi氏がギターソロを提供しています。

 

ひ と り ブラック・・・(驚愕

全体を聴いた感じ、かなり分かりやすくてキャッチー、でも攻撃性や切れ味も十分以上なスウェディッシュスタイルの(メロディック)ブラックメタル、という印象。個人的にはそのメロディ感は比較的最近のDark Funeral等を、収録曲の緩急のコントラストはMardukを連想させます。

また、曲ごとの色使いというか特徴づけもはっきりしてるので、金太郎飴状態になったりもせず、アルバム全体を通してのバランス感覚もよく出来てそう。

そして何より驚きなのは、このクオリティにしてこの音楽が一人ブラックであるという事。一人ブラックというと、どちらかというと陰キャによる引きこもり憂鬱系とか、世捨て人が人里離れて自然崇拝、みたいな方向性が多いイメージなので・・・こういうアグレッシブなメロブラ系というのは珍しい気もします。

 

1曲目の1音目から全速力のブラストビートが炸裂します。これぞファストブラック、と言わんばかりのブラスト&ガリガリ押しまくるギターのトレモロリフの嵐、嵐。マジでコレ全部ひとりでやってんスか、Borisさんパネェっす、みたいな飛ばしっぷりに思わずニヤリとしそうです。この感じはたぶんMarduk。

そんな無慈悲な絨毯爆撃の後に続く2曲目は、同様にファストながらも、こちらは趣を異にして、ずいぶんとメロウなフィーリングが香るファストチューン。ここでもブラストビートが大爆発してるのですが、なんとなく最近のDark Funeralを思わせるメロディ感で、そうですやっぱり漂うのは悲壮感。中盤少しテンポ変えてドラマティックなタメが登場しますが、ヴォーカルの叫びっぷりも相まって、そこに聴こえるのは壮絶な慟哭です。

ここで一気に速度を落としで、案外爽やかなリズムでゆったり進むミドルチューンの3曲目。例えば比較的最近のMardukって、爆速曲のあとにスローミドルの曲を配置してたりすると思うのですが、こちらもそんな位置づけの一品と言えそうです。ちょっと地味めに聴こえそうですが、耳を澄ますとやっぱりメロブラらしい

4曲目は高速2ビート主体の疾走曲で、昔ながらの北欧ブラックど真ん中なテイスト。アルバム冒頭2曲がなかなか協力なインパクトだったので、これは少々薄味に聴こえるかも知れませんが、それでもスウェディッシュブラック勢の正統派スタイルです。絵に描いた様な・・・というのはこういう事になるでしょうか。

5曲目は本作中でも屈指のメロウさを放つ一品。曲そのものは割とシンプルなメタル風というか、攻撃性はずいぶんと抑え目なのですが、キメのトレモロリフの物憂げなメロディが悲哀に満ちまくってます。なんというか、ほとんどシューゲイズ方面のあの質感に近い(?)かも。この雰囲気には随分とハッとさせられます。そしてそのギターリフに被さる悲痛なヴォーカルの雄叫び。。。激しさはないですが聴かせる魔力が一杯。

6曲目もなかなか必殺級のメロブラが炸裂。ブラストビートに乗せて邪悪に渦を巻くトレモロリフが個人的に大好きです。甘くなることなく、どこか奥底で燃え上がる邪悪な怨念と強靭な悪意・・・そしてサビ(?)に相当しそうなパートはまさに王道。スウェディッシュスタイルな感じの熱くてヒロイックなメロディーが切り込みます。

そしてラストの7曲目。”I’ll Never Fail”の絶叫が耳に残る、ドラマティックな曲がアルバムを締めくくります。序盤は堂々としたミドルテンポでメタリックな硬質感で迫るのですが、抑えたテンポとドラムスの打数のせいか、ここでヴォーカルの悲痛とも取れる鬼気迫る雄叫びが鮮明にこだまします。叫びながら血でも吐いてんでは、というくらい。。。そしてエンディングに向けて、吹雪く様なトレモロリフとブラストビートが舞い・・・このあたりの荒涼さとほんのりと切ない感じはやっぱりブラックメタル。

クロアチアの輝ける才能

既に挙げたMardukやDark Funeralのファンの皆様にはもちろん、DissectionやNaglfarなどなど、スウェディッシュなメロブラにピンとくる方には、きっとウケそうな好盤。そしてコレが(ほぼ)1人ブラックの、しかもデビュー作だというから恐れ入ります。いや実際、上記の”バンド”勢に勝るとも劣らぬ品質感でブチかましてくるあたり、このBoris氏、きっとタダモノではない。

前述の通りヴォーカルはMorbid氏によるものですが、それ以外のすべてを手掛けてるBoris氏・・・確かにこれは素晴らしい才能というか情熱の持ち主の出現かも知れません。

個人的にはもうちょっとメロディー控えめの、ビターな感じがより好みですが、そんなの抜きにしても見事な出来栄えと言わざるを得ない力作になってます。

舌を巻く攻撃性と、キャッチーで明確なメロディーのコントラストも見事な、クロアチアの才能を見せつける手堅い1枚。

 

それからあとは個人的な余談ですが、多少スタイルは違えど、(ほぼ)独りブラック聴いて衝撃的だったのは、日本のJuno Bloodlust以来かも。

 

参考にしたインタビュー記事↓

Intervju: Tryglav – Horror and creatures will come for you 

Interviews: TRYGLAV

 

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