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[レビュー]The Committee – Power Through Unity (インターナショナル/アトモスフェリック・ブラックメタル)

[レビュー]The Committee – Power Through Unity (インターナショナル/アトモスフェリック・ブラックメタル)

謎多き多国籍覆面ブラックメタル、The Committeeの1stフルアルバム。なぜか投げ銭価格で売られてるのを偶然発見しゲット。セルビアのThe Stoneの作品の一部と同じく、ドイツのFolter Recordsというところからのリリース。

もともとは、ボスニアの”メタル”英会話講師に教えてもらって知ったバンドです。”Katherine’s Chant”という曲が面白いんだよねー、ということで紹介してくれました。

 

そのへんのお話は↓記事内で少し紹介しています。

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関連情報

Metal Archivesによると、バンドの結成は2007年。そしていろいろ調べてると、結成当初はIgor Mortis – The Conspirator氏(ギター・ヴォーカル)によるワンマンプロジェクトだった様です。

その後William Auruman – The Charter氏(ドラムス)が加入し、まもなくMarc Abre – The Mediator氏(ベース)と、Aristo Crassade – The Trigger氏(ギター)が加入しています。

バンドに関して最も謎の多いのがこのメンバーについてで、Metal Archivesの記載によれば、Igor Mortis氏はロシア出身、William Auruman氏はハンガリー出身、Marc Abre氏はオランダ出身、Aristo Crassade氏はフランス出身とのこと。

なのですが、彼らのFacebookページを見ると拠点はベルギーにあって、インタビュー記事ではスカンジナヴィア出身(?)とも取れる記述もあって・・・詳細ははっきりしません。

このメンバー編成で、2013年にEP”Holodomor”をリリースしていて、本作はそれに続く1stフルアルバムという事になります。

そして2014年には、キーボード担当としてUrok – The Inquisitor氏が加入。彼は上記のEPと1stアルバムにもセッションメンバーとして参加していたらしいのですが、少なくとも1stアルバムのブックレットには、その旨の記載は存在していません。

さらにMetal Archivesによると、このUrok氏は、元The Stoneで、セルビアのレーベルGrom RecordsのオーナーでもあるUrok氏と同一人物と思われる、という記述が。名前見た時に、もしや?とは思いつつも、実際のところは謎です。

 

彼らの音楽のテーマについて詳しく触れるのは難しいのですが、どうもソビエト連邦時代の要素と深い関連がある様です。公式HPのライブ写真ではソビエト軍服風衣装+覆面に身を包んでいて、演奏する音楽の背景には当時の情勢が元になっているみたい。インタビュー記事内で記者はそれを称して、”スターリン風”と呼んでいますね。

さらにEPのタイトル”Holodomor”は、ウィキペディアによると、そのスターリンが裏で画策していたのではないかという議論のある大規模なウクライナ飢饉の名前。さらに本作の曲の1つは”Katherine’s Chant”といって、曲中ではソビエト時代の民謡カチューシャのメロディーが取り入れられているという・・・。

おまけに、タイトルトラック“Power Through Unity”では、ドイツ国家とロシア国家のメロディーまで入ってるようで、調べれば調べるほど、”そっち”方面のバンドなのかという様な要素が出てきます。

それでいて、公式HPやインタビューでは「俺たちゃノンポリ」という趣旨のコメントや発言があって・・・やっぱり謎の多いバンドです。なんだか誤解を招くことも多そうですね。

モノトーンな空気と恐るべきメロディ

かなり長い前置きになってしまいましたが、あれこれ謎も話題も多い彼ら、一体どんなブラックメタルなのか、聴いてみましょう。

ひと通り聴いての印象は・・・「ヤベー恐ろしくカッコイイ」。

 

小さなさざ波がやがて大きなうねりになって聴く者を圧倒する1曲目。トレモロリフ&ミドルテンポ主体ながら退屈さを全く感じさせないのは、全体的にちょっと曇った音質ながらも確実に訴えかけてくるビターなメロディが効いているからでしょう。勇壮で力強い壮大なメロディが音の壁となって、高らかに響き渡ります。

中盤に入ると、1stアルバムの頃のImmrtalみたいなリフに切り替わって、ここではちょっとオカルティックな雰囲気も漂います。アルバムのつかみからいきなり、謎の覆面集団がただ者ではないことをはっきり見せ付けます。

 

そして2曲目も同じく、トレモロリフに乗るうっすらとしたコード感によるメロディが格好良すぎます。まるで彼らの熱い魂が音楽を通じてにじみ出るような・・・と書くとちょっと大げさでクサい表現ですが、でもそんな感じなのです。後ろでベタ打ちのツーバス連打と、心地よいタメ具合のドラムのリズムの取り方も、その勇壮さの演出に効果的に貢献してそうです。

ヴォーカルは中音のうめき声風で、地の底から聞こえてるようなエコー感?に、ちょっと怨念めいたものを感じます。この2曲目の中では、”Tragedy~”と叫ぶ瞬間がなんとも苦くエモーショナル。

 

3曲目の前半はドゥーミーというか、本作全体に共通するモノトーンのアトモスフェリック感を存分にただよわせて、スローに進行。中盤以降ちょっとアップテンポになってヤマ場を演習します。

音作りが全然違うので同じとはいえないと思いますが、トレモロリフに、ウォールオブサウンズ、時々クリーントーンという手法とこのアトモスフェリック感を思うと、暗黒シューゲイズと呼ぶこともできそう?

 

そして本作のハイライト?のひとつの5曲目、前述した”Katherine’s Chant”です。大きくゆったりとしたうねりを持つリフとリズムで進行するパートがメインで、ここにもそこはかとなく漂う力強いメロディがあります。これが独特の心地よさ。

後半少し単音トレモロメロディを重ねてテンポを上げた後、再びドゥーミーでゆっくりとしたテンポに戻り、いよいよ件の”カチューシャ”パートが登場します。・・・原曲は勇敢ながらどことなく悲しげな曲というのが個人的なイメージですが、ここでは、なんだか鎮魂歌あるいは葬儀曲のような、悲痛な怨念が漂ってるように感じます。

 

そしてラストの6曲目でタイトルトラックの、“Power Through Unity”。これはアルバムの中でも最もテンションの高い曲かも知れません。冒頭からドカドカとブラストビートに乗って淡いメロディーのトレモロリフが炸裂。やっぱりこのへんの響きはブラックゲイズと呼んでも怒られなさそうな雰囲気じゃないかと思います。この強大な音の壁と勇敢なメロディーが、彼らの最大の持ち味なんだと思うのですが、やっぱり格好良すぎる。

中盤とラストに登場するのが、問題の(?)国歌パート。ドイツ国歌のフレーズと、ロシア国歌のフレーズが組み合わさって堂々たる威厳を放って配置されてますが・・・彼らの暗いモノトーンカラーで塗りつぶされてるので、実際のところほとんど分からない。言われればなんとか分かるかな?いやでも分からないかも、というレベルです。

 

・・・という全6曲約50分の本作。つまり1曲は7分から9分台と長いのですが、訴えかけるようなメロディ感のおかげで、曲の長さはほとんど感じません。

静かな炎の燃える強力作

インタビュー記事や公式HPでの彼ら自身の言葉では、ドゥームとブラックのコラボレーションという表現がありましたが、実際聴いてみると、確かにドゥーミーではありますが、個人的にはアトモスフェリック・ブラックと呼ぶほうがしっくりくる音像のように思えます。

トレモロリフによる音の壁に、うっすらとしたメロディがビターな雰囲気を生み、醸し出されるダークなアトモスフェリック感。そしてそれに乗る怨念めいたヴォーカル。

この全く甘くなくて勇壮、壮大&強大なメロディがとにかく格好良い。恐るべきセンスです。

個人的には、モノトーンでビターな色彩感覚は、ポーランドのMglaがやってるのに近いように感じました。実際比較して聴くと、Mglaほどメロディははっきりしていませんが、どことなくトーンというかイメージが近い気がするというか・・・。たぶんそういう甘くない音が好みの方は気に入るはず。

モノトーンの色彩に封じ込められたドゥーミーな音世界の中で、確実に何か熱いものが燃えているのを感じる、強力かつ恐るべき作品。

 

本作を買う前は、ボスニアの英会話講師に教えてもらった、”Katherine’s Chant”しか知らず、それ以上深掘りもしていなくて、それほど期待せずに思い出のために買った本作でしたが、期待以上に恐ろしく最高なアルバムでした。

そういえば余談ですが、Mglaを教えてくれたのも同じ講師で・・・いやはや素晴しいセンスの持ち主です。脱帽。

 

参考にした記事・HP↓(1件リンク先行方不明になりました><)

バンド公式HP

Interview with Igor (The Committee) (english) – Under Gouunded

 

ポーランドのMglaの記事も書いてます。ご参考に↓

[Review]Mgla – Exercises In Futility(ポーランド/ブラックメタル)

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