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[レビュー]Morgreim – Forgotten Tales(ポーランド/ブラックメタル)

[レビュー]Morgreim – Forgotten Tales(ポーランド/ブラックメタル)

ポーランド出身のブラック/アトモスフェリックメタルMorgreimの1stフルアルバム。2022年作品。これを書いてる時点ではデジタル版のみBandcampよりリリースされています。

ということでBandcampより購入&ダウンロードの品になります。本ブログでは完全デジタル音源のレビューは初ですね。フィジカル盤を入手してレビューする、ということでこれまでやってきてましたので。

関連情報というか前置き

本ブログは基本的にセルビアやボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア等主に旧ユーゴスラヴィア諸国やバルカン半島のメタルに焦点を当てて紹介する、そんな場所なのですが、なぜここでポーランド産音源か?ということから。

理由はたった1つで、超超超・・・と何個「超」をつけても付け足りないくらい衝撃的でツボにハマりまくった音源だったから。

出会いは完全に偶然YouTubeで発見しただけでしたが、その時は

こんな事もつぶやいてますね。エルデンのメリナでなければダクソ2の緑衣の巡礼かな、カバーアート的に。シャナロットでしたっけ??

・・・こんな風に筆者に相当な衝撃をもたらしたのがこのMorgreim。

 

Morgreimについては実は(?)ポーランド産という事だけしか確定的な情報が無いという、謎につつまれまくったバンドです。もはやバンドなのかプロジェクトなのかも定かではない程。

あれこれ調べてみると、仕掛人はAndrei Mishynなる人物だとか、ヴォーカル含め全てはデジタル製作の音源ぽい、といったことが周囲で噂程度にささやかれてる模様。ですが何にも情報がない。

Morgrein作品は、本記事執筆時点では、1stとなる本作”Forgotten Tales”と、同年にリリースされている2ndアルバム”XXII”の2作品。他には同一人物の作品には、Among The Lightsというポストブラックのプロジェクトで1作リリースされています。

本編 フォーク&ファンタジックな美の極致

謎しかない本作ですが、聴いた感じ宅録というかホームスタジオで作成した独りブラックみたいな趣や質感の作品。なのですが、曲やメロディー、装飾のセンスが素晴らしい。相当ツボで泣きそうな位好き。

ブラックメタル、とは書きつつも、実際はファンタジック&フォーキッシュな色彩がかなり強く、アトモスフェリックなフォークメタルと表現した方が近いかもしれません。ファンタジックな雰囲気はSummoning、ドリーミーな陶酔感はAlcestのイメージが個人的に重なります。

秀逸なのは、おそらくブラックメタル譲りの歪んだギターリフの重みと、美しいシンセの装飾、そして語り部となる女性シンガーの歌声といった要素のバランス感覚。

とりわけ、正体不明の女性ヴォーカルの歌声が個人的に刺さりまくってます。なんというかここでは良い意味で垢抜けない田舎っぽさの声質に、独特の舌っ足らずな棒読み感がいい味出しまくり。フォークロアな語り部としてまさにど真ん中で、一体何者なんでしょうか。あるいは人ならざる幻想の成せる歌声なのか・・・。例えるなら、フィンランドのBattleloreの女性シンガーのあの感じに近いでしょうか・・・あの平べったい語り口の歌声が刺さります。

 

筆者が初聴きにして衝撃のあまり半泣きになったという、アルバム冒頭1曲目”Lonely Traveller”。ハープ風の音色がポロポロと乱舞する透明なメロディだけでも息を吞むほどですが、そこに地を這う深みのギターサウンドが合わさって、フォーキッシュな甘さとブラックメタルのほろ苦さが同居するMorgreimワールドが繰り広げられます。そしていい具合にあか抜けない女性ヴォーカルの舌っ足らずな歌声が重なると・・・なんだか甘いやら切ないやら美しいやらで涙腺崩壊。

2曲目”King of the Forest Depths”は、スローなリズム&リフがドゥーミーな感触でありながら、シンセのキラキラと夢見るような装飾で、なんだか甘い子守歌でも聞いているかのような感触の一品。聴きながら眠りに落ちるか、もう永遠に消えてしまってもいいくらい甘美、かも知れません。

続く3曲目”In the Glade of Prophetic Dreams”は虫の声がささやく夜空と焚き火のイメージの、ゆったりフォークインスト。鳥の鳴き声なんかも入って、夜の森と炎の明かりが揺らめき物思いにふけるさまが目に浮かぶようです。

曲後半のハミングが淡々として素敵な4曲目“Forlorn Lands”。重厚なギターリフは混沌の坩堝みたいなドゥーム感を醸し出しつつも、シンセの装飾とヴォーカルのメロディが美しくもどことなく終末感も匂わせる感じでしょうか。こういう滅びの美って素敵です。

本作唯一の疾走パートを持つ5曲目”Royal Ring”。スタスタと駆け抜けるリズムに、宙を舞うようなシンセのメロディに胸が高鳴るよう。ヴォーカルパートは歌声とメロディの両方が、素朴ながらも、だからこその存在感を放っていてなんだか耳から離れない感じです。ドキドキするような高揚感に思わずハッとする仕上がり。ここでもやっぱり、どこかポワンとしたヴォーカルの歌いまわしが微笑ましく愛らしく味わい深くてずっと聴いてられるという。。

ピアノの音色が切ない6曲目のインスト”Sailing the Misty Seas”。そのピアノの後ろでプワプワ鳴ってるシンセの音色は、どことなくBURZUMのアンビエント作品を思わせる雰囲気でしょうか。

ふたたび登場のハープと縦笛風(?)の音色がほんのりメロウで印象的な7曲目”Path of the Star ”。ここでもゆったりとしたどこか牧歌的なテンポで、聴いててゆっくりと体に染み入るようです。この曲に限りませんがドラムスもいい仕事をしていて、とりわけアクセントのつけ方が聴き手を退屈させないあたりお見事。アトモスフェリック系って平坦で単調でつまんなくなりがちですが、きちんとダイナミックさが表現されてるように思います。

そしてエンディングを飾るラスト8曲目”River of Time”。ここはもう完全に快晴も快晴、さわやかで空気が澄み渡り花は咲き乱れ、なんだか妖精さんまで笑顔で出迎えてくれそうな程ファンタジックな質感。ここでもキラキラと色鮮やかな空気感と、ふわりとした歌声のコンビネーションが素晴らしく引き立てあってます。もはや人間が生み出したものとは思えない純粋さというか透明さで、美しさの点でもはやこの世ならざる桃源郷??こんな世界の中で消えてしまえたらどんなにいいか。。。

魂の救済の一品

偶然の出会いからの衝撃。そしてその衝撃のあまりこうしてレビューを書かずにはいられないほどの作品だった本作”Forgotten Tales”。

実は(?)筆者、最近は何聴いててもほとんど感動もなく、音楽自体に関心を失いつつあるような状態だったのですが、これ聴いてると自分自身の魂というか精神の在りどころって、こういう音楽なんだなって思い出させられます。実際音楽聴いて感動したり泣きそうになったりするのはずいぶん久しぶり。

そんな意味で本作は、続く2ndアルバムと共に相当救われてる、自分にとって魂の救済となったアルバムです。個人的に、聴くたび曇りまくった視界の晴れる思いのする、そんな一品。

また、ファンタジックな作風だったり、フォークメタル方面好きな皆様にはきっと受けそうな逸品で、捨て曲なしで満点をつけたくなる、勝手に押し付けたくなる作品です。

 

Morgreim公式Bandcamp↓

https://morgreim.bandcamp.com/album/forgotten-tales

 

Amazon様リンク↓


Morgreim – Forgotten Tales
 

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